ストリートファッションは、ただカッコイイだけじゃなく、実はすごいカルチャーと言えます。今でこそファッションの流行といったものは、何か天気予報のように自然発生的に語られがちですが、かつてはデザイナーや企業が主導権をガッチリ握っていました。パリコレクションやミラノコレクション等で一流デザイナーたちがお披露目会を開いた後、貴族やセレブたちがその新鮮なファッションを支持し、それを企業が真似して、一般大衆が追随する、という流れだったのです。
しかし1960年代あたりから若者たちは、こうした風潮に抵抗を続けてきました。ヒッピーやロックンローラー、モッズ、パンク、ヒップホップなど自分たちの生き様に合わせて独自のスタイルを確立していきます。状況が一変したのは、1990年代に入ってからでしょう。基本的にファッションも、アートも、カルチャーも、前時代の否定(アンチテーゼ)から成り立っていました。ところが否定を繰り返した結果、一周してしまい、「もう否定できるものはない」「ぜんぶ正しい」と、価値観は一気に多様化します。そして「絶対的な美」を担うべきとされていたデザイナーの地位は失墜し、サブカルチャーがメインのカルチャーと同等と見なされ、「オリジナルの発明」よりも「過去のモノの再編集」にクリエイターは精を出す時代へ突入。以降は細分化された狭い世界の中だけのローカルヒーローやカリスマブランドがたくさん生まれました。
一方、パーカーの歴史にフォーカスしてみると、その源流はアラスカの原住民までさかのぼりますが、いわゆる現代の洋服スタイルの原型は1930年代にチャンピオンが開発した労働者のワークウェアだと言われています。当時チャンピオンは米国の学校に運動着も提供していたので、学生たちの間でも浸透していきました。大ブレイクを果たしたのは、1970年代。ヒップホップのスターたちが着たことから、冬が寒いニューヨークの若者の間で重宝され始めます。さらに1976年に公開された映画「ロッキー」で人気は決定的となりました。
日本では、夜な夜なパジャマとサンダルで徘徊していたヤンキーたちが最初に目をつけ、上下スウェットに装いを改めます。その後、ヒッポホップの「ギャングスター」に憧れたカラーギャングやチーマーたちも追随。渋谷のチーマーの中には「陸(おか)サーファー」も混入していたので、サーフブランドも好まれました。そのアンダーグラウンドな文化は、後にスケーターやグランジ、レイブなどのクラブミュージック等と結びつき、やがて裏原宿で開花していくのです。ちなみに現在は、上下スウェットのヤンキーたちは上下ジャージにランクアップしています。どうやらEXILEの影響が大きいようです。
A BATHING APE(ア・ベイシング・エイプ)
最近の若者は知らないとは思いますが、むかしむかし「裏原宿ブーム」というものがありました。その勢いはそれはそれは凄まじく、毎日iPhoneの発売日かというぐらい有名ブランドのショップには行列が出来ていました。同ブランドは、その中心的存在です。
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UNDERCOVER(アンダーカバー)
2000年前後には、若手実力派デザイナーとして圧倒的な存在感を持っていた高橋盾氏によるファッションブランド。「持っていた」と過去形で書いたのは、もう若手ではなく大重鎮だからです。2011年~12年にはユニクロとコラボして話題になりました。
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XLARGE(エクストララージ) / X-girl(エックスガール)
LAを中心とするスラッシャー文化の代表的格。ヒップホップは黒人のスラム街より生まれ、兄貴のお下がりを着るためダボダボな服装スタイルが一般的でした。同ブランドは白人ラッパーが作りましたが、ダボダボな服装に敬意を払い受け継いでいます。X-girlはレディースラインでテイストが全然違います。
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STUSSY(ステューシー)
1982年にサーフボードの作り手だったショーン・ステューシー氏によって立ち上げられました。片手間で友人たちにプリントTシャツも作っていたところ、噂が噂を呼び、あれよあれよという間に世界的なストリートブランドになってしまいました。
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Hood By Air(フッドバイエアー)
友人向けにTシャツを作っていたら、気づいたら世界的なブランドへ。そういう意味では、21世紀のSTUSSYといっても過言ではないのかもしれません、多少強引ですが・・・。インパクト大なデザインが多いためオシャレ上級者たちの間で人気ですが、シンプルなものを選べば初心者でも安心です。
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mastermind(マスターマインド)
元ヨウジヤマモトで経験を積んだ本間正章氏と藤田昌洋氏がスタートした。「ハイクオリティなジャパンブランドで世界に勝負する」という考えのもと、まず世界進出に成功し、日本に逆輸入のカタチでヒットする。本来はストリートブランドではないが、結果としてストリート好きな人に支持されているのが現状。
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24Karats(24カラッツ)
国民的ダンス&ボーカルユニット「EXILE」プロデュースによるファッションブランド。EXILEスタイルは、いわゆる「ヤンキー資本主義」のド真ん中としてアウトローに夢見がちな中高生たちの心を鷲掴みにしています。パーカーはセットアップで着るのが正解。クロックスのサンダルとの相性も抜群です。
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adidas(アディダス)
ヒップホップの歴代スターたちになぜか愛されまくったadidas。カリスマラッパーのランDMC氏は、「MY ADIDAS」という曲まで作るほどでした。また一方で、クラブではサッカーシャツのアイテムが好まれ、adidasはストリートのあらゆるシーンに登場するブランドイメージを獲得しています。
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