COMME CA DU MODE
フランス語っぽいですよね。結論から言えば、造語だそうです。
意味は、「こんな様式は、いかがでしょう?」。
知人よりファイブフォックス社の古い会社資料をお借りしたところ、
そこに簡単な解説が記載されていました。
分解すると、次のような感じになります。
「COMME CA」+「DU」+「MODE」
それぞれの意味は以下。
「COMME CA」≒「like this」→「このような」
「MODE」≒「fashion」→「様式、ファッション、おしゃれ」
そして、残された「DU」についてです。
これが調べれば調べるほど奥が深いというか、
ブランドネームに対する粋な遊び心がうかがい知れます。
まず、前提として、フランス語「mode」には2通りの意味が存在します。
女性形「la mode」で「流行」という意味。
男性形「le mode」で「様式」という意味。
「DU」とは、「de+le」の省略形ですから、
コムサデモードの場合、男性形の「様式」と訳すのが正しいようです。
もう少し突っ込んで説明すると、
女性形「la mode」=「移ろい行くもの、一時的なもの、気まぐれなもの」
男性形「le mode」=「いつまでも変わらないもの、しっかりしたもの」
といったニュアンスの違いがあるらしい。
つまり、ことわざの「女心と秋の空」ではないですが、
ころころと気まぐれに移ろい行く軽薄なファッション、
ただ消費されるだけのファッションから一線を画した
根底に確固とした「軸」のあるスタイルを打ち立てたい、といった
強い「意志」が、このブランドネームから読み取れるというところでしょうか。
COMME CA DU MODEブランドが誕生したのは1976年。
まだ高度経済成長の余韻が残りつつも、
オイルショックにより少し閉塞感がただよう時代の中でした。
その後、1981年のパリコレクションで
川久保玲氏「COMME des GARCONS」や山本耀司氏「Yohji Yamamoto」が
脚光を浴び、間もなく国内でも空前のバブル経済が本格的にスタートして
輝かしい日本のモードファッション、狂乱のDCブランドブームが始まりますが、
新しい時代の幕開けに向けて日本ファッションの実力を溜めるために
それまでの下地がマグマのようにぐつぐつと熟成されている期間だったといえます。
80年代、上っ面だけ真似た軽薄な「ブランドらしきもの」が次々と誕生し、
結果そのほとんどが消えていった事実を踏まえるならば、
対して、現在も一定の人気を持ち続けるCOMME CA DU MODEには、
時代の洗礼に耐えうるほどの揺るぎない美意識がその原点にあったのかもしれません。
ただ、それがホンモノなのかどうかがわかるのは、もう少し先の話でしょうか。
手元にある古い会社資料には、次のように書かれています。
最後に、それをお伝えできればと思います。
なお、当時の雰囲気を正確に伝えるためにも、そのまま引用させていただきます。
もちろん私たちも、決して流行に鈍感な服を作りたいとは思いません。
時代とともに生きるのが「服」の運命だとするならば、
時代の求めるものが変われば、
その結果としての「服」が変わっていくのもごく自然なことでしょう。
しかし、流行だけで塗り固めたような、次の年ににはもう着られないような服を
作るのは、もっと本意でない。
少なくともその服がごく自然に、物理的に傷んでしまうまでは、
飽きずに着つづけられる服こそ、本当の「服」というものだと考えたいのです。
(FIVE FOXes社の会社案内資料より)