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スタイル説明/ニューウェーブ

大きな時代の流れで見れば、1980年代とは、「新自由主義」への移行期間だったといえる。1979年よりイギリスではサッチャー政権が、1981年よりアメリカではレーガン政権が、1982年より日本では中曽根政権がスタート。それまでの『福祉重視』から『市場原理主義』へ社会が大きく舵を取った時代だった。発端は、1970年代中期にはじまる経済構造の変化にある。さて、少し時代を遡ってその変化について順を追って説明したい。まず1950年代。アメリカの大手自動車メーカー「フォード」は、ベルトコンベアによる画期的な生産方式(フォーディズム)を開発した。その生産方式は、大量生産・大量消費を可能とし、その後、経済は飛躍的に発展することになる。同時に、安定的な生産拡大・消費拡大は、労働者の将来にわたる賃金上昇を約束し、さらには「賃金上昇システム」「分業」「労働組合」「最低賃金制度」「9時~17時の勤務時間」「余暇の保障」「社会保障政策」といった中流階級の豊なライフスタイルを実現する基盤を生み出した。

それから次に1950年代~70年代。豊な生活基盤の上で育った若者たちは、大人たちとは別の文化を創造し、大人社会に反抗をはじめる。豊かさが歴史上初めて彼ら若者に大人に対抗する力と知識と自由を与えたのだ。彼らはロックを聴き、ジーンズを履き、「大人は何もわかっていない!」と叫び続けた。とにかく古い価値観に反抗すること、闘うことが、彼らのアイデンティティのようですらあった。ところが、繁栄は、その裏側で成熟と停滞をもたらす。1970年代までにあらゆる試みはやり尽くされ、「リバイバル・ファッション」が登場。さらに大量生産は、世の中にモノを溢れさせ、“ただモノを作っただけでは経済は成り立たない”という社会が到来した。次の時代に求められたのは、刻々と変わる消費者の嗜好にあわせた「フレキシビリティ(柔軟性)」である。組織よりも個人へ、生産技術よりもマーケティング技術へ、正社員よりも非正社員(パート・アルバイト・派遣)へ、重点が移る時代になったのだ。1973年の石油危機以降、フォーディズム体制は立ち行かなくなり、1970年代を通して世界の中心アメリカの高度経済成長はゆるやかに終わっていった。

そして1980年代である。新しい時代が幕を開けると、それまでの好景気の中で安定していた社会はほころび始め、好景気と安定に代わって不況と競争社会の足音が聞こえ出し、徐々に若者たちの苛立ちは強まっていった。1970年代の終わりにはパンクが古い時代の価値観に風穴を開けたが、それもすぐに収縮に向かってしまう。組織よりも個人重視の風潮は、若者たちから反骨心を失わせ、彼らの多くは内向化した。政治や正義を語るよりも個人的な趣味やライフスタイルにこだわるほうが歓迎されたのである。主流となっていたファッションは、アメリカの1950年代(フィフティーズ)のリバイバル。最も輝かしかった時代のスタイルだった。とはいえ、若者の特権だった反骨精神、パンクの魂の破片はアンダーグラウンドで着実に受け継がれていた。音楽、ファッション、アート、映画、等々・・・あらゆるものへ伝播し、やがてマーケティング・商業主義に取り込まれて洗練されていった。ニューウェーブとは、そんな「ポスト・パンク」のムーブメントを指す。まず音楽では、シンセサイザーを使ったテクノ、ノイズ、サイケが登場し、エレクトロニックな音楽・サウンドはポップ、ロック、ファンク、ジャズなどを巻き込んで、それぞれのジャンルを進化させた(「エレクトロ・ポップ」「ネオ・アコースティック(ギターポップ)」「アシッド・ジャズ」「ネオ・ロカビリー」など)。また、一方、ファッション界では、コム・デ・ギャルソンの川久保玲やワイズの山本耀司が1981年にそろってパリコレにデビュー。従来のルール無視のボロ服ファッションを提示して保守的なモード界を震撼させた。

【「ニューウェーブ」に含まれるスタイル例】
■テクノ(1980初頭)
■ニュー・ロマンティクス(1978-80初頭)
■ツー・トーン(1979-81)
■プア・スタイル(1982-83)
■モノトーン・スタイル(和名:カラス族)(1982-84)
■UKハードコア・パンク(1980-83)→服DBでは「パンク」に含んでいます。
■ゴス(ゴシック)(1981-80年代中期)

【代表的なブランド例】
コム・デ・ギャルソン
ワイズ
ヴィヴィアン・ウエストウッド

【代表的なアイテム】
◇人民服(テクノ)
◇海軍将校のような革ジャン(ニュー・ロマンティクス)
◇白黒のツートーンで固めたスーツ(ツー・トーン)
◇安っぽい生地、穴が開いた服(プア・スタイル)
◇全身真っ黒の格好(モノトーン・スタイル)
◇死神のようなメイク、ベルベット生地の黒のコート、オカルトアイテム全般(ゴス)

【同時代のスタイル】
1980年代

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